2010/02/05

振袖や附下・訪問着は柄優先?それとも寸法優先?

洗い張りから仕立て直しをお請けする際に、寸法を変えて縫うことがよくあります。
というか、寸法を変える目的で仕立て直す場合がほとんどですね。

附下や振袖など、柄がつながっているお品の場合、少し注意しなければならない点があります。
柄を優先するか、寸法を優先するか、という問題です。

附下や振袖の柄は何かの寸法を基準にして染めるしかないわけで、その基準の寸法と着る人の寸法が一致すれば問題ないわけですが、違った場合に、さて、どうするか、という話になるわけです。

↓百聞は一見にしかずということで、こちらは先日お客様がお持ちになった附下です。


前おくみと前身頃の縫い目と前身頃と後身頃の縫い目の部分にちょうど丸い柄がありますよね。
このきものの場合、おそらく柄優先で仕立ててあったらしく、柄がぴったり合っています。
が、このお客様にはだいぶ大きめに仕立ててあったわけです。

だいたい附下や振袖を染める際に基準にしてある寸法は少し広めになっています。
その方が許容範囲が広いからで、これは仕方のないことです。

ただ、常に柄優先で仕立てれば良いというわけではないと思うのです。
もちろん、前おくみと前身頃の柄は一番目立つので、柄を合わせなければいけません。
しかし、脇縫いのところはそれほど目立たないので、寸法を優先して、柄をずらすこともありだと思います。

↓こちらが脇縫い(前身頃と後身頃の縫い目)


↓寸法を優先すると、こんな風に柄がズレる(この写真はかなり大げさにずらしていますが)


理想的には着る人に合わせて染めることですが、費用面でもそういうわけにもいかないですよね。
大事なことは、売る側が「附下や振袖はそういうものですから」と決めつけず、「柄を優先するか、寸法を優先するか、それぞれのメリット・デメリットをお客様に説明して、納得してもらった上で仕立てること」だと思います。

ちなみに、だるまやは特にお客様にこだわりがなければ、寸法優先にしています。
わざわざお客様の寸法を測らせていただいて仕立てるわけですから、着やすいきものにしたいので。

4 件のコメント:

  1. 私は寸法優先でやってもらってました。
    今でこそ、押しも押されもせぬ
    でぶとんぼですが、20代は40キロ…、
    ウエスト56…呉服屋さんも困ってましたが
    「着づらいと着物が嫌いになっちゃうし」と
    わらってました。
    回数は着ませんが、子供のころから
    着てますから、着づらい着物はイヤです。
    柄もだいじですが、脇は少々ずれても
    着易さが優先です。
    せっかくのオーダーメイドですからねぇ。
    身に合わない着物を着ていると、
    見てすぐわかりますから「借り着」かな?
    なんて思いますよ。

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  2. >とんぼさん
    コメントありがとうございます。
    サイズが合わないきものを着るのは大変ですよね。
    下前を折り返して、、とかやってるうちに着崩れますし。
    せっかく仕立てるならお客様にぴったりのおきものにしたいと思います。

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  3. TEPU2010/04/03 23:39

    仕立ての知識のない人が、
    絵羽を作ったり、柄置きをしているのが
    原因の一つだと思います。
    (昔と今とでは体型も違いますし)

    残念ながら仕立て屋が上記のことを
    言ってもまったく聞いてもらえないと、
    和裁の師匠が言っておりました。
    (特に女の仕立て屋の言うことは、
     男の染元・織元は聞く耳をもたないと)

    仕立てあがって初めて「着物」になるのに
    絵羽と違う状態で納品になると、
    わかって染めて、販売してるんだろうかと
    疑問に思うことが多々ありました。
    柄がいい位置にこない
    絵羽・反物というのは欠陥品も同然です。

    お客さんから、
    柄があっていないと苦情が来れば、
    鋏を入れた仕立て屋の責任になります。
    知恵を絞れる仕立て屋がいなくなれば、
    「柄あわせ」という言葉も
    消えるかもしれません。

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  4. >TEPUさん
    なかなか難しい問題なんですよね。

    理想的にはお客様の寸法に合わせて、白生地から染めればいいのですが、なかなかそうもいかないわけでして。

    染め職人は良い柄を染めつつ、仕立てのことも頭に入れておく、仕立て屋さんはお客様の寸法と柄のバランスをなるべく取るように努める、というように、両者が少しずつ歩み寄ることが必要だと思います。

    その間を取り持つことが小売店の役割の一つかもしれませんね。

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