2010/04/23

ガード加工(パールトーン、撥水加工)のメリットとデメリット

ガード加工が施されている反物の洗い張りはかなり大変です。

ガード加工は水をはじくように糸に加工するわけですが、洗い張りの「のり入れ」をする際の布のりもはじいてしまうのです。



上の写真は、ガード加工してある反物に布のりを引いた状態です。
この反物はきものに仕立てた後にガード加工をしたようです。
表に出ていた部分は布のりをはじき、縫い目の中に隠れていた部分は布のりを吸い込みます。
そのため、写真のように布のりをはじいた部分と吸った部分の色が変わって見えるのです。



で、こちらはアップの写真。

布のりが反物の上を転がっているのが分かると思います。

この状態で乾かしてしまうと、のりじみになってしまう場合があるのです。
そのため、なるべく均等にのりを効かせるために、何度ものりを引きます。
手間かかるんですよ。。

ネットを見ていると、「きものにはガード加工をした方が安心」という文章をよく見かけますが、必ずしもそうとは言えません。
例えば無地のきものを染め替える場合を想定してみましょう。

無地のきものを染め替える場合、反物を染料の中に浸けるのですが、ガード加工がしてあると、当然染料もはじきます。
ガード加工が均等にされていれば良いのですが、ばらつきがあった場合、染料の効きにもばらつきが出ます。
そのため、染めムラになってしまう場合があるのです。
上の写真の布のりを染料だと想定していただければわかりやすいと思います。

とはいえ、もちろんメリットもあります。
当たり前ですが、水をはじくので、水じみが出来にくいことです。

■メリット
・水をはじくため、雨の日に着る場合や、水屋に入る場合などには水じみがつきにくい
 (もちろん雨ゴートにもしますね。)

■デメリット
・洗い張り、丸洗い、紋入れ、染め替えなどの手間がかかる。
 (手間だけではなく、仕上がりがうまくいかない場合がある。)
・絹の風合いが変わる。
・水ははじくが、油分ははじかないため、例えばドレッシングや汗などはシミになる
 (油もはじく加工もあるようです。)

ということで、だるまやではガード加工をしてほしいというお客様が見えられた場合、理由を聞いて、メリット・デメリットも説明した上で、するかどうか決めています。

6 件のコメント:

  1. ガード加工ってすごいんですね。縫い目でくっきり分かれているのが良くわかります。
    あと、ガード加工していればいいってもんじゃないんですね。
    しかも、水ははじくけど油ははじかないんですね~、知りませんでした。
    勉強になります。
    確か、成人式の振袖はパールなんとか加工をしていたような…
    ほかの着物はどうかなぁ?
    あ、明日、天気が崩れなければ着物を持っていこうと思います。
    よろしくお願いします(^^)
    ガード加工しているかは不明です…

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  2. >あかママさん
    コメントありがとうございます。
    油もはじく加工もあるようなので、補足しておきました。
    とはいえ、ガード加工してあるきもののしみ抜きをよく請けるので、汚れないというわけではないですね。

    ご来店お待ちしております!

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  3. 初めまして。
    ネット初心者です。
    貴重な情報を有難う御座いました。

    阪神大震災後
    「物は持つまい。」と 思っておりましたが 娘が大きく成人近くになり また 娘は将来
    日本の伝統文化を世界に広めるお仕事をしたいとの想いから 着物を作ってやりたいと思いました。

    通りすがりに小石丸の光悦茶の無地に出会い
    製作中ですが 肝心の呉服屋さんが
    知識が無い状態で「パール●ーン」加工の
    話も充分にしてくれませんでした。
    油・脂を通す物も有るのですね。

    「縫い上がってからでも出来る。」
    と言われました が
    素人ながらに反物の時にするのとでは違うだろと感じていましたが 呉服屋さんにどう言えば良いか解らない時に

    6代目さんのブログに辿り着きました。

    着物は大好きですが
    呉服屋さんの対応で着物離れに成ってしまった
    人も多いと思います。

    三越さんで購入した時も
    柄行で悲しい思いを体験致しました。

    今後ともお知恵を頂きたく
    伏してお願い申し上げます。

    日本の呉服業界の益々のご発展のを
    何時も心からお祈り申し上げて折ります。

    邂 逅


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  4. >匿名さま
    コメントありがとうございます。
    仕立て上がった後に撥水加工をした場合、縫い目の中には撥水加工がされないため、いずれ寸法を直した際に撥水加工がされていない部分が表に出てきます。
    撥水加工自体あまりすすめませんが、もしするならば、反物の状態でしたほうが良いと思います。

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  5. おばの着物をもらい、丸洗いに出すときに
    ガード加工も合わせてしたほうがと言われて
    あまり深く考えずに加工をお願いしてしまいましたが、
    仕立てた後に加工するとこういう形になるんですね。
    驚きました。
    また、丸洗いや洗い張りでガード加工って落ちるんだと思っていました。
    まさかのりを受け付けない物になっちゃうとは。
    紬などは洗い張りからしあがってくると艶が出て「おぉ~」と感動することが多いのですが、
    ガード加工をしちゃったものはあの感動がないんでしょうか。

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  6. >匿名さま
    ガード加工がしてあると、布のりの効き具合はしていない場合と比べて変わりますね。
    生地の硬さに合わせて布のりの濃さを調整するのですが、ガード加工がしてあるといくら濃くしてもほとんど効きません。
    何でもかんでもガード加工を勧めるのはあまり良くないと思っています。

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